2025年4月新設の育児休業等給付
- k-miwa0
- 8 時間前
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2025年11月17日以降、厚生労働省によって「育児休業等給付専門のコールセンター」が設置されています。育児休業等給付は、子の年齢や養育の状況に応じて、要件を満たす場合に雇用保険から支給されることになる給付金で、出生時育児休業給付金、育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金があります。
そのうち出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金については、2025年4月に新設されたばかりの新しい給付金ですが、制度の複雑さも相俟って、申請から給付金が支給されるまで時間を要するケースもあることが問題となっていました。コールセンターはそのようなところから、育児休業等給付に関する制度内容や支給要件、具体的な申請手続き、支給時期や電子申請の処理の目安に関する問い合わせを受けるために新たに設置されたものですが、ここではその新設された出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金について、その制度内容を解説していきます。
出生後休業支援給付金
出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金ないし育児休業給付金を受ける人が、それと併せて上乗せでもらえる給付金です。(出生時)育児休業給付金では休業した期間に対しておおむね休業前給与の67%が支給されますが(ただし休業181日目以降は50%)、夫婦がともに育児休業を14日以上取得した場合、出生後休業支援給付金によって、休業前給与の13%が最大28日間支給され、(出生時)育児休業給付金とあわせて、収入が給与の80%水準にまで引き上げられます。そして育児休業中は社会保険料が免除となるため、手取り額で考えると実質100%になる仕組みです。
支給要件としては、夫婦がともに「対象期間」内に14日以上の育児休業を取得していることで、「対象期間」とは被保険者本人が母親の場合は産後休業後8週間まで、父親の場合は基本的に子が生まれてから8週間以内となっています。また、配偶者が育児休業を取得していない場合でも、配偶者が専業主婦(夫)であるなど、以下の例外条件に当てはまれば、被保険者本人の育児休業のみで支給が受けられます。
1.配偶者がいない
2.配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
3.被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
4.配偶者が無業者
5.配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
6.配偶者が産後休業中
7.その他1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない(育児休業給付の受給資格がない場合など)
なお支給要件については、厚生労働省のホームページにある出生後休業支援給付の簡易診断(要件確認)ツールによって確認することも可能です。
そして具体的な支給額についてですが、まず支給額の計算式は「支給額=休業開始時の賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×13%」となります。したがって、たとえば給与月額30万円の人が28日間休業した場合であれば、賃金日額が30万円÷30日=1万円となるため、支給額は「1万円×28日×13%=36,400円」です。これに通常の育児休業給付も「1万円×28日×67%=187,600円」として支給されますから、合算して合計額は「224,000円」になります。ただし、賃金日額には上限があります(2025年8月からは16,110円)。上限額は毎年変わりますが、給与月額が大きい人については、必ずしも手取り額の100%相当額にならない点には留意が必要です。
育児時短就業給付金
出生後休業支援給付金が子の出生直後の休業期間を支援する給付金であることに対して、育児時短就業給付金は、育児のために時短勤務を行い、労働時間が減った分、同時に減ってしまう給与を補填して収入減を緩和する給付金になります。
支給要件は、「2歳未満の子のために、時短勤務を行う雇用保険の被保険者」かつ「育児休業給付の対象となる育児休業終了から14日以内に時短勤務を開始したこと、または、時短勤務開始日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月あること」です(雇用保険の被保険者期間は、出勤、有休などの給与支払の対象となる日が11日以上ある(11日未満の場合は、80時間以上勤務している)完全月が1か月としてカウントされます)。したがって、育児休業を取得していない人や、育児休業終了から時間が空いていても対象となる場合があります。なお対象となる時短勤務は所定労働時間を短縮しているもので、フレックスタイム制、変形労働時間制、裁量労働制、シフト制で働いている場合も、労働時間を短縮すれば対象となります。
そして支給期間は原則として、「育児時短を開始した日の属する月から育児時短を終了した日の属する月まで」の各暦月となりますが、次の(1)から(4)に当てはまる場合は、その日の属する月までが支給対象月となります。
(1)育児時短に係る子どもが2歳の誕生日の前々日
(2)産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した日の前日
(3)育児時短就業に係る子どもとは別の子どもを養育するために、育児時短を開始した日の前日
(4)子どもの死亡その他の事由により、子どもを養育しないこととなった日
支給額は時短中に支払われた給与の10%相当額になります。具体的に、たとえば給与月額30万円の人(週所定40時間)が、週所定を30時間にする時短勤務によって給与月額22万5千円(所定労働時間、給与月額ともに25%減少)になった場合の育児時短就業給付金は22万5千円の10%である22,500円になります。ただし、時短時の給与が90%を超える場合や、給付金と時短時の給与を合算した金額が支給限度額(2025年8月からは471,393円)を超える場合は、その金額に応じて支給額が調整されます。また時短時の給与額が時短前より高い場合や、給与額のみで支給限度額を超える場合は、給付金は不支給となります。
以上、出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金の制度内容について見てきました。なお実際の支給申請は原則として被保険者本人ではなく会社が行うこととなりますが、いずれにしても出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金は、ともに仕事と育児の両立支援の観点から、収入の心配をすることなく休業したり、柔軟な働き方ができるように新しく設けられた制度です。制度を充分に活用できるよう、対象となる方は、通常の育児休業と併せてご自身でもその内容を把握するとともに会社に早めに相談すること、そして会社としては本人の申し出からスムーズに手続きの対応ができるよう、フローを今一度整理しておくことが望ましいでしょう。



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