令和8年10月「カスハラ防止策」の強化。ルールで心は救えるか?
- m-ohashi
- 3月25日
- 読了時間: 3分
2026年(令和8年)10月より、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止対策がさらに強化されます。企業には相談体制の整備や被害者の保護が、これまで以上に厳格に求められるようになります。
また、当事務所所在地である桑名市では、令和7年4月1日より「桑名市カスタマーハラスメント防止条例」が施行されていますので、カスハラをとりまく状況の深刻さも推し量ることもできるでしょう。
しかし一人の社労士として、この制度が策定された経緯や、現場を守るための「対応の重要性」は痛いほど感じています。しかし同時に、人間心理のメカニズムを観察し続けてきた者として、現在の「対策」の風潮には、ある種の限界を感じずにはいられません。
なぜ「マニュアル」だけでは解決しないのか
現在示されている多くの指針は、「どのような言動がカスハラか」を定義し、それを超えたら「毅然と対応(拒絶・排除)する」という、いわば組織防衛の盾を作ることに主眼が置かれています。
現行の対策マニュアルが、相手の背景や心情に深く触れることを避けるのは、それが「火に油を注ぐリスク」だと考えているからだとは推測されますが。それは世間一般的にも、「そんな身勝手な甘えを許すべきではない」「毅然と切り捨てるのが正解だ」という声が大半でしょう。
もちろん、従業員の心身を守ることは企業の絶対的な義務であり、行政が整えたこの制度は現場の守り神となります。しかし、表面上の「乱暴な言葉」だけを捉えて注意し、排除する。この「対症療法」だけでは、根本的な解決には至りません。
怒りの背面にある「届かない願い」
カスハラと言われる激しい言動の裏側には、実は本人も自覚していない「切実な願い」が隠れていることが多々あります。
一人の人間として尊重されたい(軽視されたという痛み)
自分の困りごとを本気で理解し、困っている今の自分の気持ちをそのまま受け取ってほしい(孤立感)
これらは人間として、極めて正当な願いです。しかし、その表現方法が「暴言」という歪んだ形をとってしまった瞬間、社会は「カスハラ」というラベルを貼ってシャットアウトします。
願いが満たされないまま「注意」や「拒絶」を突きつけられた人は、さらに深い欠乏感を抱え、また別の場所で爆発する……。これでは悲劇のループです。
「制度」に「血」を通わせるために
令和8年からの義務化に向けて、私たちが真に取り組むべきは、単なる「排除のルール作り」だけではありません。
「制度」を遵守しつつ、その背面にある「願い」に目を向ける視点を忘れないこと
現場の従業員が、相手の背景を想像できるだけの「心の余白」を持てる環境を整えること
ルールはあくまで「最低限の境界線」です。 その境界線を守りつつも、相手を単なる「モンスター」と決めつけずに、その奥にある「人間としての願い」を静かに見つめる。そんな、「排除ではない解決」の視点を職場の中に育んでいくこと。
それこそが、法改正の本質を捉えた、本当の意味での「安心できる職場づくり」ではないでしょうか。
行政の枠組みを正しく活用しながら、その運用に「人間理解」という血を通わせる。 そんな、一歩先を行く組織の在り方を、これからもサポートしていきたいと考えています。




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