労働基準法改正議論のポイント
- k-miwa0
- 2025年12月23日
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2026年は、労働基準法が約40年ぶりに大改正されるといわれています。
その背景には、デジタル技術の急速な発展や、コロナ禍を経てテレワーク等の場所にとらわれない働き方が浸透した、社会や経済の構造変化などを踏まえて、厚労省の研究会が労働基準関係法制の抜本的な改正に向けた議論を進めていることが挙げられます。
実際にはまだ審議の段階であり、改正されることが確定したわけではありませんが、昨年の1月8日に厚労省が公表した「労働基準関係法制研究会」の報告書では、既に改正案を含めた検討内容が記載されていることから、その内容をおさえることで、今からでも改正に向けた準備をしておくことができます。そこでここでは、改正が検討されている10のポイントについて簡単に解説をしていきます。
企業内外への労働時間の情報開示
労働者が就職・転職をするに当たって、各企業の労働時間の長さや休暇の取りやすさといった情報を十分に得た上で、就職・転職先を選べるようにすることで、企業の勤務環境を改善するため、時間外・休日労働の実態について正確な情報を開示させることが検討されています。そして同時に、労働基準法違反の状態の発生防止や、迅速な是正につなげていくことを目的に、企業内部への情報開示・共有についても議論されています。
フレックスタイム制の改善
柔軟な働き方の一つとして推進されてきたテレワークについて、通常勤務日が混在するような場合にも活用しやすいよう、テレワークの実態に合わせてフレックスタイム制を見直すことが検討されています。その施策として、特定の日においてはあらかじめ就業規則で定められた始業・終業時刻どおり出退勤することを可能にし、部分的にフレックスタイム制を活用できる制度(コアデイ)の導入を進めることが考えられています。
法定労働時間週44時間の特例措置の撤廃
現行では商業など特例事業に該当し、かつ従業員数10人未満の事業場については、法定労働時間が原則の週40時間ではなく44時間まで認められるという特例措置がありますが、対象となる事業場の多くがこの措置を利用していない現状を鑑み、撤廃に向けた検討に取り組んでいるようです。
管理監督者に対する健康・福祉確保措置の導入
労働時間規制の適用が除外される管理監督者について、現行では特別な健康・福祉確保措置は設けられていないことから、この健康・福祉確保措置について検討をするべきとされています。また本来は管理監督者に当たらない労働者が管理監督者として扱われている場合があることから、管理監督者の要件を明確化することも検討されています。
13日を超える連続勤務の禁止
現行の法定休日は、毎週少なくとも1回の付与を原則としていますが、その例外として4週4休を認めており(変形休日制)、休日を偏らせれば、長期の連続勤務が生じたとしても、労基法違反とはなりませんでした(理論上48連勤まで可能)。また36協定を締結して休日労働をさせる場合でも、割増賃金さえ支払えば、協定内容の範囲内で連続的に勤務させることができてしまうので、精神障害の労災認定基準も踏まえて、36協定を締結している場合も含めて、2週間以上の連続勤務を禁止する方向で議論がされています。
法定休日の特定
現行法上は、法定休日の特定について定めがなく、行政通達において「具体的に一定の日を休日と定める方法を規定するよう指導」するよう示されているのみです(昭和23年5月5日基発682号、昭和63年3月14日基発150号)。しかし週休2日制が普及している現在においては、同じ週の中に法定休日と所定休日が混在しており、法定休日を特定していない会社ではどちらの休日が法定休日なのかが不明確であり、これが割増賃金の支払いに関して使用者と労働者でトラブルになることが想定されるため、法定休日の特定を明確化すべきかが検討されています。
勤務間インターバルの義務化
勤務と勤務の間に一定の時間を空ける、勤務間インターバル制度ですが、現状では努力義務であることも相まって、実際に導入している会社はあまり多くありませんでした。そこで、その導入を促進するために、インターバル時間として 11 時間を確保することを原則として、その義務化が視野に入れられています。
「つながらない権利」のガイドライン策定
「つながらない権利」とは、労働時間ではない時間に、使用者や顧客に介入されない権利のことで、フランスでは既に法制化もされている権利です。しかし現実的には勤務時間外における突発的な状況への対応なども考えられるため、報告書では「勤務時間外に、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否することができることとするのか、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ルールを労使で検討していくことが必要」として、その話し合いを促進していくための具体策としてガイドライン策定が検討されています。
有給休暇の賃金算定方法を通常賃金に統一
現行では有休取得時の賃金の算定方法として、(1)平均賃金、(2)通常の賃金、(3)標準報酬月額の30分の1に相当する額(労使協定の締結が必要)、の3つの方法が認められていますが、このうち(1)と(3)については、特に日給制や時給制の場合で、計算上賃金が減額となってしまう場合があることが問題視されています。そこで、(2)の通常の賃金による方式を原則とすることが提案されています。
副業・兼業の場合の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し
労働者が副業・兼業を行う場合において、現行では労働契約締結の先後の順によって所定労働時間を通算し、次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することで割増賃金を算定することとなっていますが、これによって本業先と副業・兼業先とでそれぞれ労働時間を細かく管理しなければならないことなどが問題視されています。複雑な管理制度が副業・兼業の促進を阻害している側面もあるため、割増賃金算定における労働時間に関しては、通算をしない方向での議論が進められています(ただし、同一の使用者の命令に基づき複数の事業者の下で働いているような場合には引き続き通算する)。一方で、労働者の健康確保は大前提であることから、健康確保のための労働時間は引き続き通算する方向性で議論されており、賃金計算上の労働時間と、健康確保のための労働時間は分けて管理することとなりそうです。
以上の点は冒頭で述べた通り、まだ具体的な法改正として正式決定されたものではありません。しかし既に議論が進んでいる以上は、その内容や時期に多少の修正・前後があったとしても、近い内容の改正が実施される可能性は、かなり高いと考えられます。
その場合、労働時間の管理から賃金の算定、加えて労使間のコミュニケーションなど、多くの点で対応の見直しが求められることになります。それらは多くの企業にとっては負担になると考えられますが、人材難となっている現下の社会状況でも労働者に選ばれる企業には、法令遵守はもちろん、その企業で働く労働者が働きやすいような職場環境の整備も、当然求められてくることとなります。今のうちから改正内容を想定した運用の見直しを検討しておくことが、人材の獲得・定着を促し、ひいては企業の生産性を高めるものと考え、実際に改正がされた際にはスムーズに対応できるよう、準備を進めておきましょう。




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