労働保険の年度更新とは?事務組合の活用と特別加入まであわせて解説
- k-miwa0
- 5月1日
- 読了時間: 6分
毎年6月になると、多くの企業で対応に追われることとなる重要な手続きがあります。それが「労働保険の年度更新」です。労働保険料の申告・納付を行うこの手続きは、労働者を雇い入れていれば、事業規模にかかわらずすべての事業主が対象となります。しかし、賃金総額の集計や申告書の書き方など、わかりにくい部分も多いため、「毎年やっているけれど、実はよく分かっていない」という担当者の方も意外といらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、年度更新の基本と注意点を簡潔にまとめてみました。
労働保険の年度更新とは
そもそも労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」の総称であり、その保険料の計算においては、毎年4月1日から翌年3月31日までの年度を単位としています。そしてその保険料納付の仕組みですが、まずはその年度において、支払うことになるであろう賃金総額(従業員の給与総額)を仮で求めて、それをもとに計算したおおよその保険料(=概算保険料)を前払いします。そして次の年度に、前年度で実際に支払った賃金総額をもとに正しい保険料(=確定保険料)を計算して、納付済みの概算保険料との過不足を精算、それと同時に今年度の概算保険料を算出して前払いします。つまり年度更新とは、【前年度の確定保険料を申告して前年度の概算保険料との差額を精算+今年度の概算保険料の申告と納付】という2つを同時に行う手続き、ということになります。
今年度であれば、令和7年度(2025/4/1~2026/3/31)の確定保険料と、令和8年度(2026/4/1~2027/3/31)の概算保険料を同時に申告することになります。なお申告期間は6月1日(月)~7月10日(金)となっています。
年度更新で注意したいポイント
1.賃金総額の集計漏れに注意
労働保険料はその保険年度において従業員に支払った給与の総額、「賃金総額」に対して、保険料率を掛けることで算出します。したがって、給与月度で何月分からを年度始まりとして集計するか(たとえば末締め翌月支給の会社であれば5月支給~翌年4月支給での集計が一般的です)、また支払った給与の中でもどこまでが賃金の範囲に含まれるかを、予めしっかり確認しておくことが大切です。
賃金の範囲については、基本給はもちろんですが、それだけではなく各種手当や残業代、通勤手当、賞与など、対象となる賃金は幅広いため、漏れも起きやすいといえますし、反対に出張旅費など実費弁償的なものは賃金とはなりませんので、ここも注意が必要な部分です。
2.雇用保険の資格確認
年度更新を機に、入退社の手続き漏れがないかを見直すことも大切です。
特にアルバイトやパートタイマーなどの非正規雇用者についての加入漏れはよく見られます。加入させているつもりで給与上は雇用保険料も控除しているのに、実際は手続きがされていなかった・・・ということも考えられるでしょう。毎年3月頃に、厚生労働省から雇用保険の手続き漏れがないか確認するハガキが届きますが、そちらを所轄のハローワークに提出することで現時点で雇用保険被保険者となっている人の一覧を確認することが出来るので、そのようなものも活用して確認するとより確実です。
3.業種区分、保険料率の確認
労災保険料率は業種ごとに異なります。労災保険料率は原則3年ごとに見直しが行われ、令和8年度では変更ありませんが、最新の料率は厚生労働省の「労災保険率表」で確認できますので、申告前には必ず確認しておきましょう。特に事業内容が変わった場合や、複数事業を行っていて労働保険番号が複数ある場合などは、それぞれの料率をよく確認しておく必要があります。
一方雇用保険料率は基本的に毎年変更され、令和8年度は原則13.5/1000となっていますが、建築業や農林水産業など、一部の業種では料率が異なりますので、こちらも業種の確認は勿論、給与計算においては正しい料率(被保険者負担分は原則5/1000)で控除されているかも、改めてチェックしておきましょう。
4.延納(分割納付)の手続き
概算保険料が40万円以上(労災または雇用保険の一方のみが成立している場合は20万円以上)であれば、保険料を最大3回に分けて納付できます。希望する場合は申告書への記載が必要となります。期毎の納期限はそれぞれ以下のとおりです。
第1期: 7月10日
第2期: 10月31日
第3期: 1月31日
ただし納期限が土日祝日に当たる場合、その翌日が納期限となりますので、令和8年度の場合、第2期は11月2日、第3期は2月1日が納期限になります。
事務組合を利用する場合のメリット
労働保険の年度更新は、毎年必ず行う重要な手続きです。しかし、賃金集計や保険料計算は意外と手間がかかりますし、上記のような注意点も多く、ミスが起きやすい部分でもあります。そこで、事務組合に処理を委託するという選択肢が考えられます。事務組合に委託できる会社は、たとえば小売業なら常時使用労働者数が50人以下など、一定の規模要件を満たす場合に限られますが、事業主にとっては大きなメリットがあります。ここでは、事務組合を利用することで得られる主な利点をご紹介します。
1. 労働保険料の分割納付が保険料額にかかわらず可能
先述の通り、労働保険料の分割納付対象となる概算保険料額は原則40万円以上ですが、事務組合に加入している場合は、保険料額に関わらず分割納付が可能で、資金繰りの面で大きなメリットがあります。
2. 手続きの大幅な負担軽減
事務組合が事業主に代わって年度更新の申告・納付を行うため、事業主は書類作成や役所への提出から解放されます。
3. 労働保険事務の専門的なチェック
事務組合は労働保険事務を代行する、厚生労働大臣認可の団体です。ともすれば複雑になりがちな労働保険事務ですが、専門家が関与することで、賃金集計や保険料計算のミスを防ぎ、加入漏れなどのリスクも軽減できます。労働保険は細かなルールが多いため、専門家のチェックが入ることで安心感が大きく高まります。
そして、上記に加えて更に大きなメリットとして、事務組合に加入している事業主は、労災保険の特別加入が可能です。
事務組合ならではの「特別加入制度」
事務組合に加入している事業主は、労災保険の特別加入が可能です。本来、労災保険は労働者を対象とした制度ですが、一定の条件を満たす場合、事業主や家族従事者など、本来的には労災保険に加入できない人も、加入ができるようになります。
加入すれば、通常の労働保険と同じように、業務中・通勤中の災害に対して補償を受けられますので、従業員の方と同じように現場に出ることが多い事業主、特に建設業などでは、万が一の備えとして非常に重要な制度といえます。
特別加入の手続きについても事務組合が代行して行いますので、事業主が個別に役所へ申請するなどといったことは必要ありません。そして年度更新では賃金総額の集計を行うため、事業主自身の働き方やリスクを考え直す良い機会であり、特別加入の見直しには適した時期といえます。
まとめ
以上、年度更新について、その概要と基本的な注意点を、事務組合の活用方法とあわせて説明いたしました。繰り返しになりますが、年度更新は事業主にとって欠かせない年次業務です。確実に行うためには気を付けなければならない点も多いので、厚生労働省が出している申告書の書き方のリーフレットも参照しながら、今から少しずつ賃金集計を進めていきましょう。そして、必要な場合は事務組合を活用することで、よりスムーズに、より安心して手続きを進めることができます。
当事務所では事務組合も併設しておりますので、年度更新に不安がある方、特別加入を検討したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。専門家として、事業主の皆さまの労務管理をしっかりサポートいたします。




コメント