社会保険の算定基礎届(定時決定)とは?そのしくみと注意点
- k-miwa0
- 55 分前
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毎年7月に提出しなければならない社会保険の「算定基礎届(定時決定)」は、労働保険料の年度更新と並ぶ、夏の労務手続き二大イベントのひとつです。算定基礎届(定時決定)は、従業員の方たちのその後1年間の社会保険料が決定される、きわめて重要な手続きといえますが、そのしくみなど、詳細まで把握している人は意外と少ないのではないでしょうか。
「毎年提出しているけれど、何のための手続きなのかよく分からない」
「給与計算と関係があるのは知っているけれど、どこに注意すればいいのか不安」
実際に手続きを行っている担当者の方であっても、そんな声を耳にすることがあります。
そこで今回は、算定基礎届の基本や実務で気をつけたいポイントを、分かりやすくまとめてみました。
算定基礎届(定時決定)とは
算定基礎届とは、従業員の標準報酬月額を毎年見直すための手続きです。
標準報酬月額は、健康保険料・厚生年金保険料の計算の基礎となる重要な数値です。標準報酬月額はその人の給与額をもとに各人で決まっているため、最初は入社時のおおよその給与額によって、標準報酬月額が決められることになります。
しかし、従業員の給与は昇給や手当の変動・勤務形態の変更などで変わることも当然にあります。すると、当初の標準報酬月額と、現時点での給与額をもとにした標準報酬月額とで、ずれが生じてきてしまいます。そこで、毎年1回、4〜6月の実際の給与額を基に標準報酬月額を決定し直すことになり、それが算定基礎届の手続きとなります。
算定基礎届の対象と提出時期
算定基礎届の対象となるのは、7月1日現在で会社に使用されているすべての社会保険の被保険者です。そして、その人たちについて支払われた4月・5月・6月の給与(報酬) の平均額をとって、その年の9月から、新しい標準報酬月額を決定・適用することになります。
提出時期については、7月1日〜7月10日までとなります(7月10日が土日祝日の場合は翌営業日が提出期限です)。
算定基礎届の計算方法
算定基礎届では、先述の通り4〜6月に支払われた給与の平均額を算出し、その金額を「標準報酬月額表」に当てはめて等級を決定します。対象となる給与(報酬)の例としては、基本給は勿論、各種手当や残業代、歩合給、現物給与(社宅・食事など)と基本的にはほぼすべてのものが当てはまりますが、実費弁償的なものなど、報酬とみなされないものは除外されます。また賞与については、別途「賞与支払届」で報告することになりますので、含める必要はありません。
あわせて、各月の支払基礎日数にも注意が必要です。支払基礎日数とは給与計算の対象となる日数のことで(たとえば通常の労働日は勿論ですが、有給休暇や無給扱いではない特別休暇なども含められます)、算定基礎届の場合、その支払基礎日数が17日以上ない月は、平均額の計算から外す必要があります。たとえば4月の給与で支払基礎日数17日未満となっているのであれば、それ以外の5月と6月、2カ月分のみで平均額を算出し、それを新しい標準報酬月額として決定します。
ただし、正社員の4分の3未満の労働時間で勤務する人、いわゆる短時間労働者として資格取得している人については、支払基礎日数の基準が17日ではなく11日以上となりますし、4分の3以上のアルバイトやパートタイマーといった、いわゆる短時間就労者に関しては、3カ月とも支払基礎日数17日未満の場合のみ、15日以上の月を平均額の計算に含めることになるため、どの被保険者がどの区分にあたる人なのかも、注意しながら計算を進める必要があります。
算定基礎届でよくある注意点
算定基礎届は一見シンプルに見えますが、実務では意外とミスが起きやすい手続きです。以下の点は特に誤りが発生しやすい箇所となりますので、より注意が必要です。
1. 対象期間の給与の「支払基準」に注意
社会保険の手続き全般に対していえることではありますが、算定基礎届は支払日ベースで集計します。したがって、「4〜6月に働いた分」ではなく、4〜6月に支払われた給与を使って手続きを行うことになります。給与が翌月支給の場合は、特に間違えやすいため注意が必要です。
2. 休職・育休・時短勤務などのケース
4〜6月の給与が通常と大きく異なる場合などは、「算定不要」となるケースがあります。
たとえば、4〜6月の期間で休職してしまい、3カ月とも給与が極端に少なくなった(支払基礎日数がすべて17日未満となった)場合は、算定基礎届の要件を満たせないので、この場合は保険者が標準報酬月額を決定する、いわゆる「保険者算定」となり、従前の標準報酬月額がそのまま適用されることとなります。また、4〜6月の途中で大幅な給与変更があった場合(後述する随時改定に該当する場合)にも、算定基礎届の結果は適用されません。
その他、休業手当の支給があった場合も通常の計算方法とは取り扱いが異なることがありますが、このようなケースは判断が難しいため、社労士などの専門家に確認することをおすすめします。
3. 通勤手当の扱い
通勤手当は支給した月額で計算します。たとえば6か月定期を支給している場合は、月額換算して1カ月当たりの金額に直した上で、各月を集計する必要があります。
4. パート・アルバイトの加入漏れ
算定基礎届のタイミングで、「本来は社会保険に加入すべき従業員が加入していなかった」というケースが発覚することがあります。特に週20時間以上30時間未満で働くパートタイマー(短時間労働者)は要注意です。既に加入できている人でも、契約変更などで通常の労働者から短時間労働者になっていた(あるいはその逆)、といったことも考えられるので、通常の労働者か短時間労働者か、加入区分が正しいものであるかにも注意が必要です。
算定基礎届と「月額変更届(随時改定)」の違い
算定基礎届は年に1回の定時決定ですが、給与が大きく変動した場合は、年の途中でも標準報酬月額を変更する必要があります。これが月額変更届(随時改定) です。
■ 随時改定が必要なケース
・昇給・降給
・手当の新設・廃止
・勤務形態の変更(時短勤務など)
上記のようないわゆる「固定的賃金の変動」があった月を起点とした3カ月間の給与(報酬)の平均を取ったとき、その数値に当てはめた標準報酬月額が、従前の標準報酬月額と比べて、2等級以上変動している場合、随時改定に該当し、月額変更届の提出が必要となります。
なお月額変更届は算定基礎届に優先します。算定基礎届は毎年9月から適用されますが、7~9月の間に月額変更届による決定を受けている場合は、月額変更届で決定された標準報酬月額の方が適用されますのでご注意ください。このような算定基礎届と随時改定の違いを理解しておくと、社会保険料の誤徴収を防ぐことができます。
社労士に依頼するメリット
以上の通り、算定基礎届は毎年の手続きとはいえ、給与計算との整合性や加入要件の判断など、専門的な知識が求められます。社労士に依頼することで、計算ミスの防止や加入漏れのチェック、随時改定との整合性確認、実務負担の軽減、といったメリットが得られます。
まとめ
算定基礎届(定時決定)は、従業員の社会保険料を決定するための重要な手続きです。4〜6月の給与を正しく集計し、適切な標準報酬月額を決定することで、従業員の負担も会社の負担も適正になります。
そして算定基礎届は毎年のことだからこそ、正確かつ効率よく進めたいものです。日本年金機構では毎年算定基礎届の記入・提出ガイドブックを出しており、手続きや届出書の記入方法について、その詳細を解説してくれていますが、もし不安や疑問がある場合は、専門家である社労士に相談することで、よりスムーズに対応できます。




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