社会保険の適用拡大について
- k-miwa0
- 1月13日
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2025年5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が第217回通常国会に提出され、衆議院で修正のうえ、6月13日に成立しました。
今回の年金制度改正の意義は、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るためのもの」とのことで、その内容は多岐にわたりますが、今回はその中でも被用者保険(社会保険)の適用拡大について簡単に説明をいたします。
まずそもそも現時点で社会保険に必ず加入することになる対象者ですが、これは適用事業所に使用される正社員と、51人以上の企業等で働く短時間労働者となっています。ただし、短時間労働者については、以下4つの条件全てに当てはまっている必要があります。
(1)週の所定労働時間が20時間以上であること
(2)所定内賃金が月額8.8万円以上であること
(3)2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
(4)学生でないこと
そして今回の改正における適用拡大のポイントは、以下の3つとなります。
①短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃
②短時間労働者の賃金要件を撤廃
③個人事業所の適用対象を拡大
以下それぞれについて、説明をしていきます。
①短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃
今回の改正により、企業規模要件が段階的に縮小・撤廃されます。現在短時間労働者で加入対象となるのは51人以上の企業ですが、これが2027年10月からは36人以上、2029年10月からは21人以上、2032年10月からは11人以上に拡大され、最終的に2035年10月で規模要件が撤廃、全企業が対象となります。

②短時間労働者の賃金要件を撤廃
現在いわゆる「106万円の壁」(8.8万/月)といわれている賃金要件についても撤廃されることとなります。撤廃の時期は「法律の公布の日から3年以内の政令で定める日」とされており、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断することとなっていますが(最低賃金1,016円以上の地域で週20時間以上働くと、年額約106万円となるため)、最低賃金の引上げに伴い、2025年の時点で既に1,016円以上の賃金水準になっているため、3年とかからず、近いうちに撤廃されるものと思われます。

③個人事業所の適用対象を拡大
現在、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所で、社会保険の適用対象外となっていた業種(農業、林業、漁業、宿泊業、飲食サービス業等)も、今回の改正で2029年10月以降は適用対象となるように拡大されます。ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外となります。

以上、今回の適用拡大のポイントについて簡単に説明をしました。実務上は、企業規模要件などについて、自社がいつから対象となるのかなどを、把握しておくことが重要になります。そしてこの適用拡大によって、これまで社会保険の加入対象外だった人も対象となることになりますが、社会保険に加入すれば、医療や年金でより充実した保障を受けられるというメリットと同時に、企業・従業員ともに、新たに保険料を負担することになるというデメリットも当然発生してきます。そしてそれは、従業員の就業調整につながってくることも考えられます。
そこで、厚労省は適用拡大の対象となる短時間労働者の支援を目的として、特例的・時限的にではありますが、保険料負担の軽減措置を実施します。対象者は従業員数50人以下の企業などで働き、企業規模要件の見直しなどにより新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者であって、標準報酬月額が12.6万円以下であるものに対して、3年の間、事業主の負担割合を増やし、被保険者の負担を軽減、そして事業主が追加負担した分については、その全額が制度全体で支援されます。

より詳細な内容は今後の発表を待つことになりますが、適用開始時には年金事務所等にその旨の簡素な申し込みを行うことで適用できるものとされていますので、またこのような支援も活用しながら、企業と従業員の双方の負担を減らつつ、スムーズに対応できるよう、今から準備を進めていくことが肝要です。